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書評:朝起きられない子の意外な病気 「起立性調節障害」患者家族の体験から

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書評:朝起きられない子の意外な病気 「起立性調節障害」患者家族の体験から

著者:武香織
中公新書ラクレ
20129月発行

プロローグ 子どもが目を覚まさない!(かかりつけの耳鼻科医の診断)
第1章 診断と治療(大国真彦先生との出会いガマンしていた大耀 ほか)
第2章 どうなる!?学校生活(1)大耀、中学1年生の挫折(クラスメートにお手紙を欠席の電話より、出席のメール ほか)
第3章 どうなる!?学校生活(2)人生を変えた出会い、進路決定(抜け殻になった息子仕事に連れていってみよう ほか)
第4章 親の本音・子どもの本音(起立性調節障害の子どもを持って起立性調節障害を持つ子どもたちの「本音座談会」)
エピローグ 長いトンネルを抜け出して(通信制高校の週1登校コースへ青少年フェスティバル運営委員長のあいさつ ほか)


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この本の大きな特徴は社会問題や家庭問題を中心に雑誌で取材・執筆している著者、武香織さんのお子さんが実際に起立性調節障害を発症しているという点です。
他の起立性調節障害に関して書かれている本の多くは医師の立場からのものが多く、本書は実際に家庭の中から見た患者家族の体験談が書かれているというのはとても貴重なものです。

この病気に関する本といえば、専門家の書いたものしか見当たりません。もちろん、私は、これらの本に心底救われました。ですが、医師の視点で書かれた本からはなかなか「毎日毎日、病気にあがく子どもに寄り添う親の苦悩」が見えてきません。

P.10 はじめに より

 社会問題等を取り扱う著者の立場からも起立性調節障害の認知度の低さに問題意識を持ち、専門的な文言も少なく平易な内容ですので家族の立場から何ができるかを解りやすく教えてくれる一冊となっています。

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プロローグ 子どもが目を覚まさない!

起立性調節障害発症当時の体調の異変に気づいた母(著者)と息子の数日間の様子が書かれています。

子どもに気遣いながらも心配しすぎるのもかえってプレッシャーとなるのではないかと案じながらもやりとりする母親の心理も書かれています。

もちろん、私だってバカじゃありません。思春期の子どもが、なんでもかんでも親に話すわけがないことも、むしろ重大な事情ほど胸の内に隠しがちなことも、理解していました。
でも、このときは、これ以上、学校のことについては、尋ねないでおきました。しつこいと、逆に何も語ってくれなくなると、思ったから。

P.22 プロローグ より

 

プロローグでは幸いにもかかりつけの耳鼻科の待合室で血圧を測ったところから、医師が起立性調節障害の可能性を示唆するといういきさつがあります。
医師の中でも認知度が低い病気ですし、専門医ではない医師により発症から間もないタイミングで起立性調節障害に気づくことが出来たことは幸運と言っても過言ではないと思います。

第1章 診断と治療

第1章の冒頭からはインターネットで最寄りの専門医を見つけるところからスタートします。
体調不良の原因が判ったこと、頼れる医師が身近に見つけられたことで、お子さんが朝起きずに眠っている様子を見ても動揺しなくなったという描写があります。
患者本人のストレスはもちろんですが、家族の心労に関して実体験をもとに書かれているのは参考になります。
後半では<自宅でできる「治療」>としてすぐに実践できる治療法が5つ紹介されています。

第2章 どうなる!?学校生活(1)大耀、中学1年生の挫折

テストという学生は避けては通れない現実、家庭教師や校長先生との交流、母親同士の交流などが書かれています。
後半の「学校を味方につけよう」の項目では保護者のみならず教育関係者向け呼びかけにもなっています。

第3章 どうなる!?学校生活(2)人生を変えた出会い、進路決定

思うように生活できず落ち込んでいた矢先、家庭教師や母親の仕事場など、学校以外の人間関係や農業体験を通して心に余裕が生まれてきます。
学校でいじめを受けていたことの告白、いじめ当事者との和解、バンド結成など大きな転機となります。

「何かをやりたい」という気持ちは、「生きたい!」と叫ぶのとまったく同じだと思ったから。
P.114

本人の好きなことに出会えたことで、音楽高校という進路決定を自分で決めます。
その後、通学時間が長く体力的に厳しくなり辞めてしまいますが、次の進路も本人が考えています。

第3章後半ではフリースクール、高校(全日制、定時制…昼間部を含む、通信制、高校卒業程度認定試験)などの多様な選択肢の紹介もされています。

第4章 親の本音・子どもの本音

4章では親と子どもの本音がそれぞれ紹介されています。
前半は起立性調節障害の患者を持つ保護者4人の声が集められてます。
後半は起立性調節障害の患者である子どもたちの座談会。大耀さんを含めた18歳〜17歳の4人です。
座談会では症状が悪化し心配する保護者を見て、子どもが精神的なプレッシャーになっていたり、母親に暴力を振るってしまった体験談や、子ども同士の人間関係などかなり話しづらい内容も含まれています。
病気になった子どもの目から世の中がどのように見えているのか、このような患者自身の心情がリアルに伝わるのは本書ならでは構成ではないかと思いました。


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エピローグ 長いトンネルを抜け出して

3章で通学が大変な高校を辞め、エピローグでは通信制高校への進学、ポイント制の音楽の学校へも通うようになっています。
本人のやりたいことが原動力になり、できることが少しずつ増えている様子を1冊を通して感じられました。

起立性調節障害のお子さんを持ち、進路を悩まれている方には一度目を通していただきたい内容となっています。

 


起立性調節障害についてまとめたページを作成しました。
中学生、高校生特有の寝坊対策や関連書籍を紹介しています。
ぜひ御覧ください。

起立性調節障害についてのページ