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書籍:うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある 親子で治す起立性調節障害

time 2016/09/14

書籍:うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある 親子で治す起立性調節障害

書籍:うちの子が「朝、起きられない」にはワケがある 親子で治す起立性調節障害
医学博士もりしたクリニック 森下克也
株式会社メディカルトリビューン
2012420

開業医として起立性調節障害にあたっている著者の臨床経験を踏まえた、医師の立場から書かれた書籍となっています。
漢方と心療内科を専門としていることから、心と体の両方から起立性調節障害にアプローチしている内容は本書ならではといえます。
また、5章ではまるごと漢方での治療方法に言及されており、東洋医学の有用性を説いている点は起立性調節障害の治療法が書かれた本としては珍しいと言えます。 

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はじめに

起立性調節障害(以下OD)は命に関わる病気ではないこと、一般的な検査(血液検査やレントゲン)では異常がみられないことから、ODは病気であると診断されないこともあります。
また、精神科ではうつ病と誤診されることもあるそうで心臓の機能を抑制する副作用のある向精神薬が処方されることがODを悪化につながる要因とも指摘されています。
筆者は医療機関・学校・家庭の無理解から、ODで悩んでいる患者は負のスパイラルに陥ることを懸念しています。

 1.「朝、起きられない」という病気

ODの知識がないことで「怠けている」「根性がない」「仮病」なとど思われてしまいがちです。
そこで「状況を正確に理解することが大切です」と本書は説いています。

体質的特徴、性格的特徴、症状の紹介やその多彩でつかみどころのない症状から発生する周囲の「無理解」と患者の「不安」について書かれています。
検査では異常がないとされていても実際には症状で悩まされていることから検査では解らないもっと悪い病気なのではないかと考えてしまう予期不安について言及されています。

予期不安とは、「これから嫌なことが起きるんじゃないか」と先のことを予想して感じる不安です。
たとえば、通学の電車に乗ったときにめまいがしたとします。すると翌朝、「あの嫌なめまいが、また起こるんじゃないか」「倒れちゃったらどうしよう」と、電車に乗る前から不安になります。その結果、電車に乗ることができなくなってしまったり、乗れたとしてもすぐ次の駅で下りなければならなくなります。場合によっては、家から一歩も出られなくなったりもします。

P.41 つかみどころのない症状がもたらす不安

OD患者が実際にこのような不安を抱えながら毎日を過ごしているということを考えると、不安を感じる場面は非常に多いと想像できます。

章末には「やってみようセルフチェック」として簡易的なチェックリストが用意されており、ODの疑いがあるかを確かめられます。

 2.もっと知りたい、起立性調節障害

2006年の日本小児心身医学会「小児起立性障害診断・治療ガイドライン」に含まれる「新しい診断基準」の紹介がされます。これはODの正確な診断をするにはとても役に立つものですが、心療内科に精通している筆者ならではの指摘として、心理的な問題は時間をかけて詳細な問診や心理テストを駆使してようやく明らかになるのに対し、この「新しい診断基準」の「心身症としてのチェックOD診断チェックリスト」は6項目しかないことから、心身症としての要素が軽視されてしまう可能性を示唆しています。
一般にODの3割が心身症といわれているなか、著者のクリニックの調査では約4割弱が心身症であったとも書かれています。

また、ODに似た病気として2種類の病気が紹介されています。

  • 睡眠相後退症候群
    夜型人間…サーカディアンリズムがずれた状態。思春期に多く成人になると改善する傾向。
  • 小児慢性疲労症候群
    健康だったのに急に疲労感をおぼえ、長期的にやる気や集中力が低下、頭痛・腹痛・嘔吐・睡眠障害・めまいが発生。

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これらとODは違いもありますが、重なり合う症状もあることから、見る角度が違うだけで本質は同じかもしれないという可能性について触れられています。

 

 3.心の病気としての起立性調節障害

本章では、精神的にも肉体的にも、言語力も成熟していない子供がストレスを溜めてしまい身体の症状として出てくる場合があるという点から、心身症の定義と失感情症について触れられています。

心身症は、日本心身医学会によって「身体疾患の中でその発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、異質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」

<中略>

この心身症にかかりやすい人の特徴として、ストレスを溜めこんでいるのになかなかそのことに気が付かない失感情症(アレキシシミア)があります。ある程度は生まれつきのものといわれ、気管支ぜんそく、過敏性腸症候群、過呼吸症候群などにかかりやすいとされています。起立性調節障害もその一つです。
言語表現のとぼしい子供にこの失感情症が加わると、何を聞いても「別に」「なんともない」「さあ」という返答しか得られないことになりがちです。すると本当はストレスを抱えているのに見逃され、結果として、身体の病気としてしか見られないということになってしまいます。

P.91 ストレスが身体に出やすい子供の心

こんな子どもがストレスを溜めやすい、こんな親が子どもの自律を妨げるといった項や子どもの精神の発達には子育てにおける父性や母性の重要性を解説する項もあります。

 4.どうやって治すの?

心身症を表すピラミッドが紹介されています。
このピラミッドは「身体」「心理」「社会」「実存」の4つからなり、一番上が本人や周囲から目につきやすいものです。

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ここには社会や実存などが含まれ、決して身体だけの問題ではないことが強調されいる点は特筆すべき点です。

人を取り巻くさまざまな要素をも考えて診ていく治療、つまり「病気」でなく「人」を診ていく医療を全人的医療といいます。
<中略>
起立性調節障害を治療するということとは、このような視点に立って、なかなか表には現れてきにくい「心理」「社会」「実存」の要素まで含めて診ていくということです。
P.128 起立性調節障害を治療するとはどういうことか

また、ODにおいては抗うつ薬や睡眠薬の使用は控えるべきという見解を示しています。
発達途上な精神の未熟さやOD症状と薬の主作用が必ずしも合っていないことや、副作用の問題点を指摘しています。
この点は患者の親がチェックしなければ見過ごしてしまうため、注意が必要です。

単に薬物療法を否定するのではなく、睡眠薬を使わずに眠るためにリラックスして寝付く方法なども紹介されており、OD患者の負担をさまざまな角度から減らそうとされている点はとても参考になります。

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 5.東洋医学で挑む

本章では著者の専門である漢方による治療方法の紹介がされています。
すぐに効果が出る治療方法ではありませんが、服薬を続け4ヵ月目で登校ができるようになったケースが紹介されています。

漢方薬がどのようなメカニズムで効くのかといった専門的な内容が含まれます。
漢方薬のメリットとしては以下が挙げられます。

  • 使用する薬の量が最小限にできること
  • 副作用が軽いものや一過性のもので危険な副作用はまずないということ
  • 体質改善により薬を使わなくても日々を送ることができるようになるということ

また、章末では簡単な漢方の観点からのセルフチェックとドラッグストアでも手に入る漢方薬の紹介もあります。

 6.周りはどうやってサポートすればいいの? 

教師の立場、親の立場からできることが紹介されています。
その根底には病気や本人への理解が最も重要であることは言うまでもありません。
進路の選択肢についても紹介がされています。

また、230ページから235ページには付録として、OD患者にポジティブな将来像を思い描き、視覚化し、それを実現するためにこれから何をしていけばいいかを具体的にする「未来日記」という文字や絵を書き込めるコーナーが用意されています。

未来日記

  • 自分の中にある可能性の原石を発掘しましょう
    (自分の可能性を見つめなおす問いや、理想的な将来像、絵を書いても回答する)
  • 次に理想的な自分に近づいている自分を描こう
    (今の自分を考える6項目とそれを具体化する問い)

医師の立場からOD患者の気持ちを考えた構成となっています。

 

 


起立性調節障害(OD)についてまとめたページを作成しました。
中学生、高校生特有の寝坊を治す方法や関連書籍を紹介しています。
ぜひ御覧ください。

起立性調節障害(OD)についてのページ


 

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すいみんまなぶ

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眠りについて必ずお役に立てるよう更新しています。 語りだすとついつい長くなっちゃいます。